九一八歴史博物館の感想

そういえば、
瀋陽で唯一、行けずじまいになっていた
場所があったんです。

どうしようかと迷っていたんだけど、
とうとう帰国直前、勇気を出して行ってきた。
娘をボディガードにして。笑


そうです。
あの、九一八歴史博物館。


直前まで本当に迷った。
ついでに、当日バスに乗り間違えて道にも迷った。


あきらめずに乗り込んだタクシー。
運転手さんにおそるおそる行き先を告げたのですが、
緊張のあまり、つい

「九十八(ジュウスーバー/※「98」の意味)」

と言ってしまった。

「は?」と言い返されて、
たどりついてもいないのに、汗がじわっとにじんだのを
思い出します。


最後の最後に、筆談で行き先が通じてしまうまで、
”「は?」がこれ以上続いたら、行先は
中街の久光(日系デパート)に変更しよう”と
心に決めていたのですけど。


迷いに迷ってたどり着いた
ここは、通称「九一八(ジュウイーバー)」
で通っている、瀋陽人なら誰でも知っている
歴史記念館です。
しかも入場無料です。


いわずもがな、
満州事変の屈辱を心にきざもうと
つくられた巨大な記念碑と、記念館がある場所。


ここへは、この日まで足が向かなかった。
だって、ねえ。そうですよね。


だけど、たまにふとよぎることがあったんです。
あそこを見ずに瀋陽を去ってよいものだろうか、と。


それで
夫に「行ってみようかな」と言ってみるのだけど、
「行かなくていいよ」「おれも一緒に行きたい」などと
やさしいのか無関心なのかわからない反応。


やめようかとも思った。
でも、やっぱりもったいないな、と
思ったんです。

瀋陽が瀋陽である所以を、見ずに帰るのは。


それで、最後の最後に、見ておこうと思い直した。
というわけで、娘とどきどきしながら
乗り込んだわけです。

a0279234_21565708.jpg

入口を入るとすぐ目に入る
大きなモニュメントに、娘っ子は興奮します。
思いっきり日本語で、

「おっきいねー!!」

と叫ぶ。

私は、小声で、「そうだね」とうなづく。


平日だというのに、お客さんは思いのほかいて、
最近の愛国教育の効果、あるいはアジア情勢の悪化が
影響しているのかもしれない、と感じました。


お客さんは、20代から40代といったところ。
カップルもいたし、学生さんらしき人もいた。


私たちのように、親子で来ている日本人は、
もちろん見当たりません。


さて、
満州事変の前後、東北部で日本が何をしたか、
またそれによってどう変わったか。


その当時、東北人はどう耐え忍んだか、
勇敢に戦った英雄たちはどうだったか
さまざまにたたえながら、
日本人の残虐さを背景に、語られていきます。


これほど殺められた人たちの写真を
惜しげもなく掲げられることにも衝撃を覚えつつ、
館内には、「日本鬼子!」という声が
はりつめているようにも思え、
展示ステージ2順目くらいで、
私はすでに、一刻も早く逃げ出したい気持ちになってしまいました。


私のボディガードであったはずの娘は、
館内で素朴な疑問をつきつけてくる。


「このひとたち、どうしたの」
「どうしてにほんは、わるいことしたの」
「どうしてけんかするの」


私は、その質問のどれにも正確に答えられない。

もうただただ、薄目をあけてパネルを斜め読みし
(読めてもいないのだけど)、

「九一八へ行きました」の既成事実をつくるためだけに、
順路を進んでいくしかなくなっていました(汗)


ときどき見える「日中友好」の文字が光だった。


館内では、老若男女が展示を食い入るように
見つめる。
何を感じているのか、ときおり話声のなかから
「日本」と聞こえるから、ひやりとする。


こちらも、日本語を話すことにおびえ、けれども
ピュアな質問を投げかけてくる娘を静止もできない。


見た目も話言葉も現地の子どもを
連れてきたつもりだったけど、
ぜんぜんボディガードになんなかった、とガックリ。


汗だくになりかけていたそのとき、
ようやく、外の光が見えてきて、
最後の展示へとたどり着きました。


出口を出る前にあった、最後のパネル。

このときになってようやく、
パネルをじっくり読む心の余裕がうまれたのですが、
そこには、こんなことが書いてありました。


「日中友好への協力と、日本の軍国主義への警戒」



こうして、
この記念館の主張というものがやっと見えて、
私は自分の妄想被害者意識から解放されたのです。


つまり、私には最後のこの文句が、
相反する言葉のように思えてならなかったのです。



1931年9月18日、
この場所で満州事変がおきた、
その屈辱を忘れまいとする。


そのためだけに、ここはあります。


ここが、日本を受け入れていくために
このような思い・場所が必要だったこと。

日本人はこれを冷静に受け止める必要が
あると思う。

うそばかりじゃないか、
と逆ギレするのではなく。


憎しみをスタート地点にするだけでは、
国の発展には限界があることを、
この国の人たちはたぶんもう知っているし、
私も体験的に知っています。


過去など、振り返ってはいないのです。
国の指導者以外は。


それはそうだとしても、
かつて、日本人の手によって
かようにも残虐な行いがなされたことを、
言い換えれば、私たちとは
そのような行為を肯定することさえできる存在である
ということを、

私たちは私たちの意識によって
忘れてはならないのだと思うんです。


そんなこと、中国に警戒されて
意識していくべきものではないのだと、
思うんです。


記念館を出たら、盧溝橋事件で破壊された橋の残骸や、
日本人が満州国時代に作った石碑などが
並べられていました。


娘はあいかわらず、「これはなに」と聞いてくる。
どうも解せないことばかりで、
なぜ中国と日本がけんかしなければいけなかったのか、
なぜ日本はここで悪いことばかりしたのか、
なぜなぜ、と聞いてくる。


私は、娘と話をした。


むかしね、にほんとちゅうごくは
けんかしたせいで、ながいあいだなかがわるかったの。
だから、ちゅうごくのひとのなかには、
にほんじんがきらいなひともいる。
にほんにも、ちゅうごくじんがきらいなひと
たくさんいるよ。

だけど、あなたには、ふたつのくにの
おとうさんとおかあさんがいるでしょう。
だから、ふたつのくにのきもちがわかるでしょう。
それはとってもいいことなんだよ。
とっても、とくしているんだよ。


私はただただ、
これらの展示を目にすることによって、
娘の自分への信頼が揺らぐようなことにだけは
なってほしくない、その一心でありました。

ぜんぜん言葉が足りない・・・

と思っているそばで、本人は実にケロっとしてた。
子どもは、そんなこと、どうでもいいのです。
過去なんてかまっているヒマないんです。
a0279234_21571281.jpg


結局、
過敏になってうまく物事をとらえられないでいるのは
私たち大人のほうなんだな。

記念館、見とかなきゃ!みたいになってね。


これから日本に帰るっていうのに
子どもに、見せなくていいもの、見せちゃったかなあ、って
ちょっぴり思いましたけど、
でも私の気持ちには決着がついたわけだし、
やっぱり行ってよかったと思う。


だけど、ここを訪れるには、
日本人ひとりじゃあ、あまりにも心細い。


ましてや、日本人同士で連れ立っていく
というのも、よけいにつらい気がする。


でも、それも考えてみればもったいないことですよね。

日本人がここに来にくいなんて、
中国にとって、こんな意味のない記念館、
ないんじゃありません?


日本語訳も完璧だったし、
時系列に並べられた資料の細かさや繊細な展示デザインは、
市内にあるどの博物館よりも
レベルが高かった気がする。

しかも無料。


街中のデコボコ道やあふれるゴミの山を普段みているだけに、
瀋陽だってやればできるのだなと、感心する。

それだけ、瀋陽にとっては重要な
なにか、シンボルでもあるんでしょうね。


だけど、内容は、あまりにも暗い過去。
未来があまり感じられないというのが、正直なところです。
(あ、共産党の未来はありましたよ)


日本人でも素直に、あそこに行ってみたい、
ほんとうの歴史を知って、
日中友好はやはりかけがえのないものだ、
と、心から実感できる記念館になったらいいなあ、と。


それが、帰国間際に行った九一八の感想でございます。


by tania0418 | 2014-12-09 23:26 | Trackback | Comments(0)
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フリーランスの編集・ライター。夫の故郷、遼寧省瀋陽市での、食、子育て、仕事。瀋陽の骨董市で見つけた雑貨を「わたしの中国雑貨店」にて販売。https://mychina.thebase.in/


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