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ほんとうの反日感情

少しずつ中国語の使える範囲がひろがってきて、
私ひとりでタクシーにのったり、
買い物したりしていても、
いわゆる外国人に思われる回数が減ってきました。


そりゃあ、同じアジア人だもの、
たいした違いはありません。


だけど、複雑な説明や要求をするには、
どうしても片言以前にならざるをえず、
そういう時に、ひとりでまごまごしていると必ず、


「おまえはなにじんだ?」


となる。



こちらに来たばかりのころは、
私がタクシーの中で夫と日本語を話していても、

「おまえは韓国人か、それとも朝鮮人か」、と

言われることがあって、
どんだけ閉鎖的なところなんだと、
瀋陽のことを思ったりしたけど・・・



少しずつ、日本人をふくめ外国人の割合も
増えているようだし、
タクシーの運転手も外国人の取扱いに
手慣れてきましたよね。


「まあ、日本からきたの!」


みたいな、驚きと好奇心によって反応する地元住民は
2年前より、ずいぶん減ったような気がします。


かといって、
最近は、真実は1%といわれる中国国営放送に(笑)
安倍首相が毎日のように映るので、

「おまえは日本人か」

というパターンも、もちろんあります。


こういうとき、
堂々と「そうです」というのにも塩梅が必要だなと
感じられるのは、
自信ありげにしても、かといって自信なさげにしても、
つけこまれることもある(かもしれない)からです。


もうすぐ9月18日がやってくるしね。


適度に堂々と、さわやかに
自分の出自を伝えたいと思うのだけど、
思えば思うほど、顔がひきつるな、
と感じる今日この頃(笑)


そして、そもそも
私は日本人です、なんていう例文に慣れていない
と気づく。


子どもと一緒にいるときは
わりと無邪気に言えるんだけどなあ。

パスポートなしで移動できる世界に
なってくれんかなあ。


一方で、
「日本=悪」と思いこんじゃっている庶民がいるのも
不思議じゃないし、
そういうひとに出会っちゃったら、
もうそれはそれでしょうがないと思っているんです。

正直な、瀋陽2年目の境地。


戦争を体験した世代が、
日本のことを批判するのともまた違う、
曲がりくねった感情が、人々の奥底に潜んでいることもまた
ここでは認めておかなければ。


抗日戦争映画が毎日のようにテレビで放送される
この国のメディアに触れる庶民が、

日本=悪

と、信じていたって、
ぜんぜんおかしくないです。

(日本にいたって同じです)


そのうえで、ですけど


「おまえは日本人か、日本はひどい国だ。だからおまえもいやなやつだ」


なんて言うような人が近づいてきたら、
はりきって、韓国人のふりでも
宇宙人のふりでもなんでもしよう、
と私は決意している。


私だって、
わざわざイラついたりするために
瀋陽で暮らすほど心に余裕あるわけじゃないもん。



でも、不思議なことに、
そんなひと、近づいてこないんですよねえ。

(私が気付かないだけっていう噂もありますが・・・)


少なくとも、
「日本人=いやなやつ」みたいなこと考える
ヒマなひと、私は知らないんだな。


実際、そんな、
脳みそ経由してないような法則をふりかざす、
実在の中国人、いるかな?って思う。



私がここで生活していて
反日感情を感じるのは、はっきりいって
テレビや新聞といったメディアの中にしか、ありません。


安倍首相があんなこと言った、こんなことした、
なんて情報が、盛りに盛られて毎日、
できるだけ隅々にまでめぐるこの国で、ですよ、
日本のことがちょっとでも嫌いにならないはずがないです。


だれだって
その情報、そこにある言葉を拾えば、

オエー

って思うと思うよ。


だから、私どもは、家でテレビをつけないし、
抗日映画なんて、あんなセンスのない作品、もってのほか。
そんな一辺倒な中国国営放送を、
私は見たいとも、信頼したいとも
はなから思っていません。


かと思えば、
真実は1%といわれる中国国営放送の(しつこい)
その1%の中身はなにか、と問えば、

「7時を伝える時報」

と答える人が、結構いる私の生活範囲のなかで、
中国人はほんとうに、冷静だと思うよ。


だからこそ、普段の生活で接していて
たまに

「おまえは日本人か(いやなやつだな)」

というような態度をちらつかせる個人に出会ったとしても、
本当に、その人個人のほんとうの感情かっていうと、
そうかな?
って感じるようになりました。


それって、時報を伝えてるだけの
アナウンサーの言葉そのままじゃない?
っていう。



結局、ほんとうに残るのは、あるいは伝わるのは、
自分が体験したこと、そこで感じたこと
だけだと思うんです。


その体験したことのなかに、
大きくみれば自分の人生のなかに、
その「国」というものが、
どのくらいの濃度で存在しているのか、
自分に問うてみれば、わかること。


体験だけが、その人の言葉になるんだと、
私は信じて疑わない。


そして私が体験している
瀋陽という場所、時間、暮らしのなかで、


いや~瀋陽って反日感情ひどいな~
ほんとマジでイケてないわ~


なんていう感想は、今のところどこにもありません。


いや、強がってないよ、ほんとに。
ほんとに、そうなんだってば!



瀋陽に暮らしたからって、
中国はこうだ、なんてひとくくりに言えたもんじゃない、と、
いうことも含めて
こんなこと書いているんですけどね。



わたしはただただ、この国の庶民の強さに
圧倒され続けています。


いちいち取材して、ルポに起こしたい
と思うくらい、
日焼けした浅黒い表情からは
生きることへの貪欲さが伝わってくる。


一般道で、馬車を走らせる行商が
どんだけクラクション鳴らされても道をゆずらない強さとか、

両腕のないおじさんが、道端で、物乞いするのではなく
毎日電池だけをだまって売っている強さとか、

もういろいろ、
ごったがえしている瀋陽が、いやはや面白いと
感じています。



今日、乗ったタクシーの運転手さんもね、
昼間じゅう走り回っているに違いない、
日焼けした、あまり表情のない労働者の顔だった。


案の定、行き先の説明に困って
まごまごしているうちに、
私が日本からきたことを説明するはめになっちゃった。


たぶん、この人も、日頃から日本については
たくさん、思うことあったんでしょう。


日本人だと知れると
ひとりでまくしたてるように、こういったんです。


「自分は、ふたりの日本人を知っている。

一人は、福原愛。
ここでよく卓球の練習をしていて、
あの子の中国語はほんとうに上手なんだ。
もう一人は、俳優の高倉健。有名だから知ってるだろ?

俺は、このふたりの日本人は好きだ。

日本っていうのは、人はいいんだよ。
だけど、日本の政治家はよくない」


そして、最後に私に二カッと笑って、
また風のように走り去っていっちゃった。


その、私に向けて笑ったときにのぞいた、
黄色く変色したガタガタの歯とかが、
いちいち忘れられないんですよね。





by tania0418 | 2014-09-02 23:42


フリーランスの編集・ライター。夫の故郷、遼寧省瀋陽市での、食、子育て、仕事。瀋陽の骨董市で見つけた雑貨を「わたしの中国雑貨店」にて販売。https://mychina.thebase.in/


by tania0418

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